恐竜好きの劇団に、恐竜が話を聞きに行った【後編】

恐竜好きの劇団に、恐竜が話を聞きに行った【後編】

2026年6月5日

前回のあらすじ

南極の稽古場に潜入し、念願だった南極の社長たちへのインタビューに成功。

インタビューの様子

前編では、劇団として、会社として、今の南極がどのように形づくられてきたのかを聞くことができた。
恐竜も満足そうだ。

しかし、恐竜は話を聞けば聞くほど、さらに気になることが増えていった。
広報の話、お金の話……

もっと深く聞きたい。そんな思いが高まったのか、恐竜に変化が現れ始めた。

ガッ……!!

ん……?

脱皮だ!!!!

一皮剥いて話そうぜ、ということなのだろうか。
どちらが本体なのかという野暮な話はやめてください。

前のめりで3人の前に鎮座し、準備万端の様子。

それでは後編。
営業活動、広報、お金、分業制の実態について、さらに深掘りしていく。


ぶっちゃけ……営業活動はしているの?

ここからは劇団や会社の活動についてもお聞きしていきます。

最近、演劇以外にもMV制作など、活動の幅をかなり広げられているかと思います。会社として営業活動をされた結果なんでしょうか?

本当は営業をかけたいんですけど、この1年間はそこまでできていません。

ただ、ありがたいことに、劇を観てくださった方が「ぜひ一緒にやりたい」と声をかけてくださることが多くて。そこから新しい仕事につながってる感じですね。

この前のミュージックビデオ*も、もともとは私たちの劇を観てくださった担当者さんが、すごく好きだと言ってくださって。きっと社内でいろいろ調整してくださったんだと思います。

*2026年2月27日に公開された、サニーデイ・サービス – 麻婆思考 [Official Video]の制作を株式会社南極が手掛けた。

作品を観てもらったことをきっかけに、さまざまな業界から「一緒に仕事をしたい」とオファーが来ること自体、決してよくあることではない。
それだけ、作品からにじみ出る魅力が、多くの人を惹きつけているのだと恐竜は実感した。


サイト制作も全て自分たちで

南極のとってもかわいいWebサイト

ポクシンさんが南極のサイト制作をされていると伺ったんですが、もともとそういうお仕事だったんですか?

独学なんだよね。

本業は紙工場でした。(実際はラミネート工場だが、「紙工場の方が面白い」という九條さんの押しにより、紙工場に。)

サイト制作は、一応スクールみたいなところに通った時期もあったんですけど……
クビになりました。

気まずそう

スクールでクビ!?

スクールで基礎を学んだ辺りで、仕事が忙しくて行けなくなっちゃって。

「このままだとクビになりますよ」と言われてたんですけど、それを無視し続けた結果、本当にクビになって。

お金払ってるのに(笑)。

応用まで学べるはずだったんですけど、基礎だけ学んで、あとは独学でやるかって感じでした。

最初はコードの文字列を一文字ずつ打ってたよね。

一文字ずつ打つ様子を再現する和久井さんと、まだちょっと気まずそうなポクシンさん

はい。でも今はAIも活用しています。AIにコードを書いてもらうこともあります。

コード一文字ずつから、かなり現代的に進化しましたね。
既存のサービスもありますが、そういうものを使わずに、1からコードを打ち込まれているんですか?

本当はもっと効率のいい方法もあると思うんですけど、1から作る方が好きなんですよね。やってる感があるなぁと思って(笑)。

晴れやかな表情になったポクシンさん

実際に出来てしまうのだからすごい。能ある鷹は爪を隠している。


10人全員がプレイヤーという強み

以前、ゲームができるサイト*を作られていましたよね。

*2025年11月に上演した『SYZYGY』(主催:ニッポン放送、株式会社南極)の世界観を体験出来るゲーム。アクセスするとまだ遊ぶことができる。

あれもトガワさんが。

あれは大変だったね(笑)。作るの自体はトガワくんがメインでやってたんですけど、中身はみんなで考えていたので。

事務所のホワイトボードに、ここでこの選択肢に行くみたいなのを書いて、「ここからどう分岐する?」って話し合って。でもゲームだから、当然バグも出るんですよ(笑)。

知り合いの音響さんが遊んでくれた時、サイトを閉じてもBGMが止まらなくなって。「怖い!どうやったら止まるん!?」って言われて(笑)。

呪いのゲームみたいになっちゃってる。

ゲームに関しては、作ってみたいなと思ったので、自分が制作側に回りました。でも、シナリオとか文章はみんなで分担していて。

流れとかは瀬安が考えるのが好きで、瀬安が中心になってまとめながら、「この文章はこの人が書いた方が面白い」という感じで割り振ってました。

広報に至るまで、10人で手作りされていることがうかがえます。

毎公演クレジットに示されていますが、会社や劇団内の業務も、しっかり分担されていますよね。それぞれ担当がある中で、最終的に「これでいこう」と判断する方はいらっしゃるんですか?

大体みんなで話し合うことが多いですが、最終判断も分業の通りかなと思います。

クリエイティブはこんにち博士で、お金周りは和久井で、グッズもみんなで話し合うけど、最終、担当の古田絵夢がこれがいいってなったらその意見を尊重するし。

広報スケジュールはえり花さんが組んでくれたもので動いていて。

SNSは揺楽瑠香と端栞里が中心で動かしていて。もちろんみんなで意見を出すけど、最終的にこれで行こうって決める時は、その担当の意見をかなり尊重します。

みんなで話し合う部分は話し合い、最終判断はそれぞれの担当に任せる。個々がプレイヤーとして独立し、お互いを信頼しているからこそ成り立つ関係性なのだと、恐竜は感じた。
その絶妙なバランス感覚が、南極という集団をより強固なものにしているのだろう。


広報についてのホンネ

ゲームもその一つですが、広報がとても独特だと感じており、これまでに無かったような取り組みをたくさんされているなと、日々拝見しております。

今までの広報企画の中で、「これは最高だったな」と思うものはありますか?

『バード・バーダー・バーデスト』*の時は、高校の公式サイトみたいなものを作りました。サイト的には自信あったんですが、思ったよりは跳ねなかった(笑)

*『バード・バーダー・バーデスト』2024年9月19日(木)~23日(月祝)すみだパークシアター倉にて上演。

恐竜たちが通う学校の物語だったので、その学校の公式ホームページをトガワが作って。「今日の献立」とか、「学校ニュース」とか、「校歌」も載せてました(笑)。

良かったと思うけどね。

毎公演、「今回はこういうことをやろう」っていうのはみんなで考えていますね。

今(取材当時)もXでけんかしている人がいますよね。

確か『(あたらしい)ジュラシックパーク』の時にも、登場人物のSNSアカウントを作られていて。とても衝撃でした。広報でこんなこともできるんだって。

今回、史実を基にしているので、化石戦争で論争していた2人がX上でレスバしてる、みたいなことをやってます。

化石戦争の現代版みたいな(笑)。

あのアカウントは、誰か1人で運営してるんですか?

いえ、何人かでやってます。それぞれ振り分けは違いますね。今日は私が投稿するみたいな感じではなくて、見つけた人が投げていく感じです。

SNSはブランディングがしっかりされているなという印象があります。

結成当初から、「何をどう見せるか」はかなり考えてきました。やみくもに発信するというより、「この作品をどう外に届けるか」をみんなで話し合って決めています。こんにち博士の作品に対してどういう広報アプローチをするかを、稽古前くらいから動き始める感じですね。

コンセプトムービーは、ある時から作るようにしていて。あれは公演の広報という面だけじゃなくて、それ自体が一つのクリエーションの一環という位置づけで力を入れています。

もちろんゲームを作ったり、サイト作ったり、映像を撮ったりするのにかなり労力はかかるんですが、それをやったからといって、爆発的にお客さんが増えるかって言われると、正直そうではなくて。

それが現実ですよね。

でも、それよりも観に来るお客さんが楽しんでくれたらいいなという思いで企画したり、観に行けないけど、南極っていつも面白いことやってるよねって積み重ねができたら、それはブランディングとして成功しているかなと思います。

だから、どうやったら予約が増えるかだけでは、あんまり考えてないかもしれないです。もちろん大事ではあるんですけど、それ以上に、この作品に合った面白いこと、南極らしいことって何だろう?というのをみんなで考えてます。

観客の一匹として、南極さんの取り組みにはいつも驚かされています。

逆に、「もっと注目されてもよかったのに!」と感じている広報企画はありますか?

全部です(笑)。

コンセプトムービーももっと観てほしいし、ゲームももっと遊んでほしいし、レスバも、誰も反応してくれなかったら、「なんなんや……」ってなります(笑)。

『ホネホネ山の大動物』のコンセプトムービー

企画を始める時は毎回、これでめちゃくちゃ注目されるぞ!って思ってやってるんですよ。でもあれ……?ってなる(笑)。

そう実感されているのは意外です。とても注目されてる印象がありました。

自分らはもっといけるんじゃないかと思って(笑)。

これだけ注目を集めていても、「まだまだ」「自分らはもっといける」といつまでもハングリー精神を忘れない。南極がここまで大きくなってきたのは、その感覚をメンバー全員が持ち続けているからなのかもしれない。


社長に聞く、お金のはなし

和久井さんは経理を担当されているとのことです。作りたいものと予算とのせめぎ合いが生じた時は、どのように判断されてるんですか?

でも、意外と細かく悩むことは少ないかもしれないです。

例えば、巨大な装置を作りたいってなったら、それってもう100万円単位の話じゃないですか。それは無理ですってなったら、じゃあ50万円で近いものを……というより、演出的にどう代替するかに舵を切ると思うんです。

だから、細かく削るというより、発想ごと切り替える感覚かもしれないですね。

かなり経営判断っぽいですね。

広報にかなり予算をかけられているのではと推測しているのですが、実際のところどうなのでしょうか。

かけているかもしれないですが、本当はもっと欲しい(笑)。どうしても広報って後回しになりやすくて、だから、実際はあまりかけれていないかもしれないです。

でも、会社化したからには、今後もっと大きな広告もやりたいなって思ってます。

2021年くらいに、「劇団としてやりたいことを何でも書いていいノート」みたいなのができたんですけど、僕そこに2個書いてて。1個は「Aマッソさんと共演したい」。2個目が「渋谷のスクランブル交差点に広告を出したい」。

1個目は有難いことに叶っていて。別に渋谷じゃなくてもいいんですけど、それに準ずる場所に南極の広告を出したい。

出したいね。

ちなみに、会社経営的には、売上の1割を広報費に回すのが健全らしいんですよ。渋谷の屋外広告が1000万円くらいなので……年商1億いったら出せる!(笑)

そのアドバイスをもらって、具体的になったかも。今、なんとなく「いつ頃かな……」って計算しました(笑)。

じゃあ広告出てたら、そのくらい稼げたんだなって思っちゃいそうです(笑)。

でも5000万円くらいで無理してる可能性はある(笑)。

先日、南極は新宿駅、東京駅、高円寺駅に広告を掲出した

劇団は、食べていけるのか

このように劇団員全員が、事務所ではなく”会社”に所属しているのはとても珍しいことだと思います。
それぞれがアーティストであり、プレイヤーであるからこそ実現できることなんだと話を聞いて感じました。
そのように躍進を進めている南極さんに、かなり率直な質問にはなるんですが……

劇団は、食べていけますか?

今は厳しい……と思うんですが、その状況を変えていくための法人化でもあるので。

今すぐ食べていけるビジョンがあるというものではないんですけど、この1~2年はそれを考えながら動いていくフェーズなんだと思ってます。でも、道はあるんじゃないかなとは思ってます。

僕も、今はまだ厳しいとは思います。でも、「食べていけるように頑張る」という気持ちは、みんな共通して持ってると思います。そのために、いろんな道を選びながら進んでいけば、可能性はあるんじゃないかなって。

ありがとうございます。

南極さんがそう言ってくださることで、演劇に関わる一匹として、とても心強く感じます。


では、最後に。恐竜から取材を受けた感想をお願いします。

恐竜に取材されたの初めてなんで……めちゃくちゃ緊張しました。

萎縮しました。

会えて嬉しいです!

こんにち博士さんはとりわけ恐竜がお好きとのことですが、みなさんは恐竜はお好きですか…?

こんにち博士の影響で、みんなもだんだん好きになっていった感じがあります。

そうですね!

私は正直、あまり興味ないですけど(笑)。でも、恐竜が好きな人のことは好きなので、いいなって思ってます。

よかったね

ありがとうございます!

お忙しい中、インタビューをありがとうございました。


先日、吉祥寺シアターで『ホネホネ山の大動物』を超満員で終えた南極。

「僕たちはもっといける」
その、どこからくるか分からない自信のような、誰にも否定することの出来ない野心のような、大きな大きな思いを10人が持ち続けている。

南極は今、「劇団」という言葉には収まりきらず、「南極」という言葉でしか表せないような、新しい集団の形を確かに作り上げようとしているのだ。

まだまだ躍進を続ける南極が、次にどんな景色を見せてくれるのか。これから先、南極がこの世界でさらにきらめいていくことを願わずにはいられない。
恐竜は、また会えたらいいなと思いながら、南極の大きくなってゆく背中を見送った。

インタビュー楽しかった!

📝前編はこちら


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今後の演劇・ダンス公演

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