恐竜好きの劇団に、恐竜が話を聞きに行った【前編】

恐竜好きの劇団に、恐竜が話を聞きに行った【前編】

2026年5月15日

南極
をみなさんはご存じだろうか。

試しに「南極」とGoogle検索するとたくさんのペンギンが出てきてかわいい。

「将来が不安なペンギンと仲間たち」というタイトルの写真を見つけた

かわいい。

南極といえば、地球温暖化で氷が溶けてシロクマやペンギンたちが困っていると言われるあの南極……

ではない。(それも大事だが)

ここでの南極は、演劇界で頭角を現し、無類の恐竜好きといわれる作家がいて、恐竜の化石を巡る物語を上演中の、

あの南極である。

南極とは?

ゆかいな劇団・南極です。
とびきりキュートな10人で”どきどき、わくわく、ちょっとこわい”をつくります。

2020年春に結成。
奇想天外なスペクタクルを土台にしつつ泥臭い人間模様を瑞々しく描く作風や、近年の演劇シーンでは失われつつあった劇団らしいグルーブ感が話題となり、演劇界はもちろん業界内外から注目を集める若手劇団です。
10人全員がプレーヤーとして舞台に立ちつつ、脚本演出・音楽・美術・デザイン・グッズ制作・プロモーション・映像制作などのクリエーションも劇団員自らで手掛けています。

南極 プロフィール写真

2026年5月14日(木)~17日(日)まで、吉祥寺シアターにて南極第9回本公演『ホネホネ山の大動物』が上演される。

緑色に光る恐竜の骨のイラスト
南極『ホネホネ山の大動物』チラシ表

その知らせを聞きつけた1匹の恐竜🦖が、南極にインタビューしたいと言い出した。

南極の作品にどこかシンパシーを感じていた彼は、活動を追ううち、作品だけでなく広報や劇団運営など、南極の活動自体に強く興味を引かれていったという。
(彼は吉祥寺シアターから発掘されたため、小劇場演劇のことにちょっぴり詳しい。)

どうやって南極はここまで大きくなったのか。
株式会社南極とは一体どのような組織なのか。
そして、劇団は持続可能なのか。

その裏側に迫るべく、我々は南極の社長へアポを取り、インタビューへ向かった。


稽古場に潜入!

某日。稽古場に到着した恐竜。

ガウガウ……(緊張するなぁ)

インタビューは初めて。だが意気込みは十分。台本もちゃんと書いてきたのだ。

稽古場を覗く恐竜

ガウガウ(ここが南極の稽古場か)。

稽古場では、『ホネホネ山の大動物』が絶賛けいこ中だ。

取材の時間になると、南極の皆さんが取ってくださっていた奥の部屋に案内された。

ガウガウガウ……(ついに社長たちとご対面だ……)

\ドドーン!!/

左から、南極の九條えり花さん、ポクシン・トガワさん、和久井千尋さん

ガウー!(社長だー!)

和室で、とはなんとも趣深いインタビューになりそうだ。畳がまぶしい。

というわけで、ここからは恐竜によるインタビューをお届けする。
実際にはガウガウ吠えているのだが、お見苦しいかと思うので、これを読む人間の皆さんのために、翻訳した状態でお届けする。


自己紹介

インタビューの様子

今日はよろしくお願いします。まずは自己紹介をお願いします。

株式会社南極の代表取締役をしております、和久井千尋(わくいちひろ)です。

普段俳優として出てもいますが、会社では助成金の申請や公演の予算管理などの経理周りをメインで行っています。

株式会社南極の代表取締役ポクシン・トガワです。

会社では、和久井の経理の補佐や、会社周りの事務作業をしています。Webサイトの作成もしています。

実は、南極は全員が取締役員をしていまして(笑)。

全員!?

はい。なので、株式会社南極の取締役の、九條えり花(くじょうえりか)です。

劇団では制作をしているんですが、会社でも広報的な役割を担っています。取材の対応や、外部からお仕事をいただいた時の窓口をしています。

この若さで、劇団員全員が取締役。「取締役」という響きのかっこよさに思わずほれぼれする恐竜。


社長が2人になった経緯

どうして和久井さんとポクシンさんが、連名で代表取締役になったんですか?

もともとは、南極10人全員で社長をやろうって話になってたんです。そっちの方が面白いんじゃないかって(笑)。

ただ、会社の信用とかを考えた時に、代表が10人って何かしら不都合がありそうで……。

前例がなさすぎるらしくて。起業支援をしてくれる行政の方に相談した時、周りの人がびっくりするかもしれないから、1人か2人にした方がいいんじゃないかってアドバイスをいただいて(笑)。

社長10人の会社はさすがに聞いたことがないですね。

会社といったら会計とかお金の管理が大事なので、それが得意な和久井と……僕はちょっとやりたいなと思って(照)

照れるトガワさん

なんで照れてんの?

結果、2人でやることになりました。他のメンバーはみんな取締役員をしています。

いろいろ役割分担をした方がいいかな、というのもあって。劇団では、ユガミノーマルがキャプテンをしていて、こんにち博士が作・演出をしていて……という形ですが、劇団の地続きというよりかは、会社の代表は別の人がやった方がいいよね、という。あとは単純に、2人ともしっかりしてる。

なるほど。劇団と会社で、役割を分けているんですね。


「株式会社って、かっこよくない?」

法人化した決め手についても伺いたいです。やはり公演規模が大きくなってきたことが理由だったんでしょうか?

それも一つあるかなと思います。公演の数も増えてきて、会社という箱があった方が、公演規模を大きくしたり、できることの幅も広がりますし。大きくしていくための手段として、法人化がベストなんじゃないかと思って、去年起業しました。

あとみんなの中で、単純にかっこよくない?みたいな話もありました(笑)

起業した方がこの演劇業界できらめけるんじゃないかと思いましたね。

わかります。憧れがありますよね。

合同会社の方が、設立費用も安いし、もっと簡単に立ち上げられるんですが、株式会社南極の方が名前が面白いなと思って。

株を持てるんや、みたいな(笑)。

起業した時に、社長から株の説明とかを受けたんですが、よく分からないけど、なんかかっけえな……って思いましたね。


南極に入りたいと思ったら入れるの?

もし株式会社南極に入りたい恐竜がいた場合、入社は可能なんでしょうか?

どうなんでしょうね(笑)。

でも、現状、人手はずっと足りてないです。今はまだ公式に募集をかけたりする予定はないんですけど、可能性はゼロではないかなと思ってます。

ただ、劇団としては、南極10人でやっていきたい気持ちが強いです。10人というユニット性を好きでいてくださる方も多いですし、その力はすごく感じているので。

一方で、株式会社南極の方は、いろんなクリエイターの方も交えて、もっと緩やかなコミュニティみたいな形になれたらいいなと思ってます。今はまだ、10人で生きていくので精一杯なんですけど、ちゃんと会社として責任を持てる状態になったら、そういうことも視野には入れています。

恐竜ももしかしたら彼らの一員になれるかもしれない。いつか、チャンスはあるということだ。


10人全員が東京に揃った!

『(あたらしい)ジュラシックパーク』上演時の団体写真

ここ数年でかなりステップアップされている印象があるんですが、自分たちの中で「ターニングポイントだった」と感じている瞬間はありますか?

僕の中では『wowの熱』*ですね。お客さんが入りきらなかったり、会社化したり劇団名を変更したタイミングとも重なったりしていて。

*『wowの熱』2025年3月26日(水)~3月30日(日)新宿シアタートップスにて上演。

僕は、その1年前に上演した『(あたらしい)ジュラシックパーク』*の時ですね。その頃まだ会社員をしていて、仕込みにもあまり参加できてなかったんです。場当たりの時間にギリギリ駆け込む、みたいな感じで。でも、その時に立ち上がっている舞台美術を見て、「一気に進化してる!!」と感じたんです。

ちょうどその頃から、音響・照明・舞台美術のスタッフさんを固定でお願いできるようになってきていて。場当たりの時のクオリティや質感が学生の頃からだいぶステップアップ出来ているなと感じました。自分たちのやりたいことと、プロのスタッフさんの技術がちゃんと噛み合い始めてる感覚がありました。

*『(あたらしい)ジュラシックパーク』2024年3月28日(木)~3月31日(日)王子小劇場にて上演。

あと、『(あたらしい)ジュラシックパーク』って、僕が東京に来たタイミングでもあって、10人全員が東京に揃ったタイミングでした。それも1個のターニングポイントでしたね。

全員バラバラに上京してきて。半年に1人ずつくらいのペースで(笑)。最後のポクシン・トガワが上京したのが、『(あたらしい)ジュラシックパーク』の時だったんです。

それまでは通いだったんですか?

そうですね。夜行バスで通ってました。土曜日まで仕事して、そのまま夜行バスに乗って、日曜に稽古して、その日のうちにまた帰る、みたいな。

ありえないハードワーク!

福島公演の時、大変だったよね。彼が有給を取ってなくて。

取れなくて(笑)。

日曜日の公演が終わった瞬間に帰らないといけなくて。福島から大阪の工場に、翌朝9時までに行かないといけなかったんです。

みんなでどうしたら帰れるかってホワイトボードに書き出して(笑)。新幹線、飛行機、タクシー、船……これ全部乗り継がないと帰られへん!って。でも無事につきました。

ホワイトボードに書いていた様子を再現するトガワさん

すごい執念だ。


会社員と劇団の両立について

皆さんもともと会社員をされていたというお話でしたが、辞める時って、かなり覚悟が必要だったのではないでしょうか?

僕はみんなから東京来いよって言われ続けてたんですけど、なかなか踏ん切りがつかなくて。でも、行くかって決めてから1年くらい、会社と交渉して、ようやく辞められました。

覚悟……そうですね、 南極でやるしかないなって感覚でしたね。

私は会社員と劇団を両立してるかっこよさみたいなのを、自分の中では誇りに思ってたんです。

でも、本業があるから断るみたいなことが続いて、劇団としてももっと大きくしていきたいと思った時に、私が会社を辞めて南極にフルコミットした方が、南極も大きくなるだろうし、自分の人生ももっと輝くと思ったんです。

ここ、かっこよく記事にしてください。

かっこいい九條さん

僕も、会社員と劇団を両立してることを、自分のアイデンティティにしてた部分はありました。

でも、南極がここまでちゃんと作品を作れるようになってきた時に、無理しながら続けるかっこよさより、全力をかけていい仕事をする方が大事なんじゃないかって思ったんです。

南極が売れて、お金が回るようになるのを待っていては、多分いつまでも辞めるタイミングが来ない気がして。南極としていい仕事をしていくためには、専業でやっていく方が良いんじゃないかと思いました。

あと、こんにち博士が、会社辞めた瞬間、頭のキャパが一気に広がったって言ってたんです。今、それをめちゃくちゃ実感してます。

仕事のことって休みの日でも頭のどこかに残るじゃないですか。それがなくなっただけで、締め切りが減った……って(笑)。

これまで本業に割いていたパフォーマンスを、劇団に費やせるようになったんですね。


目標は「人類初の月面劇」

今後、劇団や会社をどう大きくしていきたいですか?

前例がないことをやりたいっていう気持ちはずっとあります。他と同じことをしても仕方ないよね、っていうのはみんな思っていて。もちろん参考にしている部分はたくさんありますけど、似てる道を参考にしつつ、新しい道を探してる感じですね。

会社を作った時、一応ビジョンとして掲げたのが、「人類初の月面劇」です。

月面劇!?

ちゃんと毛筆で書いて、額縁に入れて事務所にも飾ってます(笑)。

もちろん半分ふざけてはいるんですけど、半分は本気で。

そこまで大きくなっていくために、今「演劇」という手段を使って、どれだけ面白いもの、マジカルなものを作れるかっていう。その積み重ねの先に、そういう未来があるのかなって思ってます。

なんか、南極の皆さんなら本当にやりそうですよね。月面から配信して欲しいです。


後編では、恐竜がさらに深堀り。南極の広報についての話や、営業活動、お金、分業制の実態について、掘って掘って掘りまくります。

📝後編はこちら

  • URLをコピーしました!
目次