2025年1月31日(金)~2月2日(日)に上演する、吉祥寺シアター主催のダンスショーケース「吉祥寺ダンスリライトvol.4」。
本企画に参加する4組の若手アーティスト※を、私たちは「次なる時代を“リライト”する、ダンス新世代」と称しました。
※浅川奏瑛、egglife、BALA、宮悠介。ほか、Von・noズによる公募若手ダンサー出演作品、総合ディレクター・北尾亘が主宰するBaobabの作品を上演。
「吉祥寺ダンスリライト」のコンセプトは「未来の上書き=リライト」であり、これからのコンテンポラリーダンス界の中核を担う新たな表現者たちとともに、現在のシーンを更新することを目的としています。
本記事では参加アーティストのひとりである宮悠介について、3カ月間の彼の創作期間に密着し、新たな才能がコンテンポラリーダンスの世界に名乗りを上げるまでの過程を記録します。
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宮悠介という表現者を紐解くキーワードは「孤独」であると私は考える。
私が初めて宮の作品を観たとき、彼はどこまでも孤独な表現者に見えた。
孤独であるということは、表現者にとってひとつの原点であり、そして武器でもある。
人間はどうしようもなく孤独で、だからこそ私たちは、表現をすることで誰かと繋がろうとする。
そんな原始的な欲求をのぞかせる宮の作品は、痛ましさと苦しさで思わず胸が締め付けられるような鑑賞体験を私に与えた。
ダンスを観ていてそんな気持ちになったのは、はじめてのことだった。
『架空生物の鳴き真似(Alien Blues)』はそんな作品だった。
『架空生物』は宮自身のソロダンス作品として初演され、他のダンサーへの振付作品としての上演など、さまざまな形で繰り返し上演されてきた、宮の代表作のひとつである。
トラウマともいえる自身の少年時代の記憶をモチーフに、ひとりの人間の身体と声を駆使しながら、行き場のない過去が力強くしなやかな舞踊に昇華されていた。
宮自身の身体性もさることながら、演出の鮮やかさやバリエーションの豊かさにも目を見張るものがあり、優れたダンサーでありながらアイデアマンとしての一面もうかがうことができた。
マイクとルーパー(リアルタイムで音を重ねるボイスエフェクター)による声と身体を用いた即興演奏や、暗転の中で行われる香りや風の演出。
手を変え品を変えながら観客とともに記憶をたどり、外見も変容させながらやがて舞台上には孤独に鳴く架空の生き物が立ち現れる。
私が最も心惹かれたのは、その終幕であった。
架空生物は道化のような姿になり、笑いと無表情を繰り返しながら孤独に踊り続ける。
やがてそのまま客電がともり、無機質な終演アナウンスが流れ、未だ笑いながら踊り続ける哀れな少年をよそに観客は会場を後にする。
SOSを発信し続ける少年を置いて会場を去ることに、私は一抹の寂しさを覚えた。
彼の孤独を、私たちにはどうすることもできないことが、どうしても寂しかった。
私が彼にかけてあげられる言葉は、何もなかった。
踊りを観ることで、私と彼は疑似的に孤独を共有することができていた。
だが、それすらも私たちの側から一方的に断絶させる構造を最後に用意した宮悠介は、やはり孤独という永遠の命題から逃れられない表現者なのだと思った。
それが、私が宮に惹かれてやまない一番の理由だ。
宮が自身の孤独とどう向き合い、どのような表現に辿り着くのかについて、私は注目せずにはいられない。
宮だけでなく、人間は多かれ少なかれ、みな永遠の孤独を抱えている。
だから私は、彼の表現に共鳴し、彼を縛り付ける舞台と私たちのいる客席のあいだに、かすかな心の繋がりを求めている。
内省的なモチーフを豊かな表現に昇華しつつ、それでもなお観客の胸を締め付けるような切実さを纏う作品づくりを行う宮悠介を、「ダンス新世代」の中核を担うアーティストとして、私は強く推していきたい。
舞台写真:Maegawa Toshiyuki
担当:小西
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宮悠介
1998年生まれ。身体表現者。筑波大学、大学院修了。ダンサーとして鈴木ユキオ「堆積-Accumulations-」シビウ国際演劇祭等、国内を代表する振付家の作品に参加。振付家として自己の実体験を基に自作自演で踊る作品を創作。地元新潟で地域おこしを行う弟とAIR運営中。
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吉祥寺ダンスリライトvol.4
次なる時代を“リライト”する
ダンス新世代、到来
2025年1月31日(金)~2月2日(日)
吉祥寺シアター
1月31日(金) 19:00 A
2月1日(土) 14:00 A/19:00 B
2月2日(日) 14:00 B
A:浅川奏瑛 BALA Baobab
B:egglife 宮悠介 Von・noズ+公募ダンサー