2025年1月31日(金)~2月2日(日)に上演する、吉祥寺シアター主催のダンスショーケース「吉祥寺ダンスリライトvol.4」。
本企画に参加する4組の若手アーティスト※を、私たちは「次なる時代を“リライト”する、ダンス新世代」と称しました。
※浅川奏瑛、egglife、BALA、宮悠介。ほか、Von・noズによる公募若手ダンサー出演作品、総合ディレクター・北尾亘が主宰するBaobabの新作を上演。
「吉祥寺ダンスリライト」のコンセプトは「未来の上書き=リライト」であり、これからのコンテンポラリーダンス界の中核を担う新たな表現者たちとともに、シーンを更新することを目的としています。
本記事では参加アーティストのひとりである宮悠介について、3カ月間の彼の創作期間に密着し、新たな才能がコンテンポラリーダンスの世界に名乗りを上げるまでの過程を記録します。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
前回の記事では、宮悠介の代表作『架空生物の鳴き真似(Alien Blues)』のレビューを通し、宮の表現が纏う孤独に彼の創作の原点を見出した。
![](https://arte-friends.com/wp-content/uploads/2024/12/宮悠介③_photo-by-Maegawa-Toshiyuki-scaled.jpg)
今回は2024年6月に開催された、宮にとって初の単独主催公演を振り返る。
公演名は以下の通りである。
『なんで踊ってるか全く分からないし、誰かに分かって貰えるとか全然思ってないんだけど、たぶん共鳴して一緒に震えたいんだとおもう。みんなと。』
それまで自身の実体験をもとに自作自演で踊る作品を上演してきた宮は、今公演で初めて他者への振り付け作品を手掛けた。
この公演を通して宮は、ダンサーや観客といった、表現を通して関わるすべての人(=みんな)との新たな関係性を模索し、「他者との共鳴」というテーマによって、表現者としての大きな転換点を迎えることとなったであろう。
![二人の人物が手や腕を互いにつかみながら寝転がっている](https://arte-friends.com/wp-content/uploads/2024/12/0607miya-48_かたちたち-scaled.jpg)
今回の「吉祥寺ダンスリライト」の参加アーティストである浅川奏瑛と山田暁のデュオ作品『かたちたち』は、ヨコハマダンスコレクションのコンペティションII(新人振付家部門)で最優秀新人賞を受賞した宮のソロ作品『かたち』をもとにつくられた作品である。
全くかたちの異なる2つの身体が、互いの人生を再生しながら激しくぶつかり合い、ぐしゃぐしゃになって混じり合う。
宮が取り組んできた「個人的な体験をもとにした創作」が、はじめて彼の人生の外にその対象を広げたことで、彼の作品に客観性と多様性が加わった。
優れたダンサーでありながら、同時に優れた振付家でもある浅川奏瑛、山田暁両名の創造性が遺憾なく発揮され、宮の生み落とした作品世界がどこまでも豊かに広がっていくのを感じた。
![波打つ透明のカーテン越しに一人の人間が立っている。](https://arte-friends.com/wp-content/uploads/2024/12/0607miya-58_かたちたち-scaled.jpg)
『かたちたち』は来年2月、「吉祥寺ダンスリライト」の直後に「KYOTO CHOREOGRAPHY AWARD 2024」にて上演される。
初演と異なる出演者たちにより、また新たな「かたちたち」が生まれることだろう。
![](https://choreographers.jcdn.org/wp-content/uploads/2024/05/1613c009b245fdc70eabf166f38897bf-scaled.jpg)
そしてもう一作、今回の「吉祥寺ダンスリライト」でも宮の作品に出演する横濱さくらによる『架空生物の鳴き真似(Alien Blues)』が上演された。
『かたちたち』が他者の人生をもとにつくられた作品であったのに対し、『架空生物の鳴き真似』で描かれるのはあくまで宮自身の人生である。
![一人の人物が床に胡坐を組み座っている。マイクを持ち、音響機器を操作している。](https://arte-friends.com/wp-content/uploads/2024/12/0607miya-1_架空生物の鳴き真似-1-scaled.jpg)
他者によって語られ直した『架空生物の鳴き真似』は、横濱の身体を媒介することでより「演劇的」な作品に仕上がっていた。
宮は今作で「ダンサーという“俳優”に自己の投影という“演出”を施す」ことを試みたと言っていい。
多くの場合、優れた振付家は同時に優れた演出家でもある。
演劇性という新たな方向性を獲得した宮が今後どのように自身を“物語る”のか、大いに注目したい。
![一人の人物が歯を出して笑っている。写真がぶれており歪んで見える。](https://arte-friends.com/wp-content/uploads/2024/12/0607miya-25_架空生物の鳴き真似-scaled.jpg)
自身の孤独や他者との関わり方に実直に向き合いながら力作を生み出し続ける、宮悠介という表現者の行く末を、私はどこまでも見つめていきたい。
そして今、彼の表現を“リライト”する、新たな作品がまさに生まれようとする、その瞬間に私は立ち会っている。
![一人の人物が長い棒を持ち、腰をかがめて目をつぶり立っている](https://arte-friends.com/wp-content/uploads/2024/12/0607miya-94_俳優の民-scaled.jpg)
舞台写真:アラキミユ
担当:小西
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
宮悠介
1998年生まれ。身体表現者。筑波大学、大学院修了。ダンサーとして鈴木ユキオ「堆積-Accumulations-」シビウ国際演劇祭等、国内を代表する振付家の作品に参加。振付家として自己の実体験を基に自作自演で踊る作品を創作。地元新潟で地域おこしを行う弟とAIR運営中。
![宮悠介プロフィール写真](https://arte-friends.com/wp-content/uploads/2024/12/宮悠介_photo-by-Shoya-Fukunaga.jpg)
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
![吉祥寺ダンスリライトメインビジュアル](https://arte-friends.com/wp-content/uploads/2024/12/本チラシ【表】.jpg)
吉祥寺ダンスリライトvol.4
次なる時代を“リライト”する
ダンス新世代、到来
2025年1月31日(金)~2月2日(日)
吉祥寺シアター
1月31日(金) 19:00 A
2月1日(土) 14:00 A/19:00 B
2月2日(日) 14:00 B
A:浅川奏瑛 BALA Baobab
B:egglife 宮悠介 Von・noズ+公募ダンサー